かわうちワインサポータークラブ会長 / 井出茂
かわうちワインは「子どもを育てている感じ」のするワイン。
ー井出さんはかわうちワインクラブの会長をされている井出さんから見て、かわうちワインとは、一言でどんなワインなのでしょうか?
「子どもを育てている感じのするワイン」ですね。伸びしろがまだまだあって、これからみんなが、みんなの手で育てていくワインですね。時間とともに美味しくなっていく、時間とともに仲間が増えていく、知らないうちに多くの仲間と一緒に飲める、そんな感じかな。全く完成しているというものでもなくて。
僕にとっては本当に愛おしい存在なんですよね。出来の悪い子ほど可愛いというか、あ、ワインが出来が悪いって言ってるんじゃないですよ。(笑) ワイナリーを一から作る際に、みんなが苦労して石を拾ったり、水がないので水を汲んできて、ジョウロで一本一本、ワインの木に水やりをしたことを思うと、愛おしいというかね、そんな感じかな。
一瞬でも生産に携わった人間として見ると、あの場所で、あの過酷な環境の中で、よく枯れもせずに育ってくれたなと思いますね。
ー井出さんにとってかわうちワインはまさに「子ども」のような存在なんですね。ワイナリーについてはいかがでしょうか?
もう宮崎駿の世界ですね、ラピュタですよあそこは。(笑) 非常に素晴らしい、人工物が全くない、そんな場所、あまりないよね。葡萄の畑が広がっていて、朝早くだと雲海が見えたりして、そして朝日が昇ってくる。
葡萄はミッドナイトハーベストといって、朝日が上がる前に収穫をするのが、葡萄のの糖度が一番高いと言われていて、とあるワイナリーで働かれている人から聞いた話ですが、そのミッドナイトハーベストをカップルで体験してもらって、ワイナリーの近くの縁結びの神社でお参りをして、宿に戻るとワインとちょっとしたおつまみがあって、「今日は良かったね」なんて言いながらワインを流し込む。素敵な体験ですよね。
この体験がかわうちワイナリーでも出来たら良いだろうなと思ってるんですよね。そんな出会いの場や、人が育つ場であってほしいなと思いますね。非常にロケーションも良いので。
ーかわうちワインやワイナリーに5年後、10年後にどのような存在になってほしいですか?
何かあったときに集まる集合場所にワイナリーがなるというかね。僕も今年の初日の出は、家族でワイナリーに日の出が上がるところを観に行きました。川内村には天山文庫もありますが、子どもたちが何かあると「ワイナリーに行こうか」と、その景色を観ながら、色んな話ができる場所というか。そんな心の拠り所になれるような場所がいいなって思うね。
そのためには、子どもたちも含めて、より多くの人に収穫体験にワイナリーに足を運んでいただきたいですね。あとはやっぱり、いつかはコンクールで金賞、これはシンボリックな話になりますので、金賞がほしいなと思いますね。そうすることで子どもたちが「おらがの村にあるワインつくるところは、金賞をもらったんだ」と自慢できて、お土産に必ずそれを持っていく。そのお土産の背景にあるのは、川内村の自然であったり、豊かさであったり、人ですからね。
かわうちワインやワイナリーは川内村全体の財産ですから、将来的にはあそこで働く人、栽培家、醸造家、そこに関わるすべての人たちの誇りになれば良いなと思います。かわうちワイナリーのユニフォームを着ていることが、その人の自信や誇りに繋がるような、そういう場所になってほしいです。そして、そこで働く人たちをみて、僕も働きたい、私も働きたいと思えるような。福島のワインの聖地になってもらいたいね。ワインも育てるけど、同時に人も育つ、そんな場所になると良いなと思っています。